当JAそうま地区では、2024年から国の事業である「令和5年度補正果樹農業強靭化緊急対策(花粉供給緊急対策事業)」を活用し、剪定枝からの梨花粉採取に取り組んでいます。従来、同地区では輸入花粉の利用に頼ってきたため、受粉樹を持たない生産者が多いです。中国国内で発生した梨の「火傷病」により中国産梨花粉の輸入停止が決まったことで産地での梨花粉の確保が必要となりました。今年度は剪定枝3万5,000本から粗花粉4・25㌔(約8・5㌶分)の採取を計画します。
そうま地区の梨の生産量は23年度出荷実績約718t、販売金額約2億7,816万円を記録するなど梨栽培が盛んな地域です。管内の栽培面積に必要な花粉量を確保するためには、自家採取量の増加のみでは対応が困難な状況なため、JAが花粉採取を支援することで安定的に花粉を確保できる体制を整備します。
県や相馬市、南相馬市、JA職員が所属する「JAそうま地区日本なし花粉確保対策検討会」を立ち上げ、JAそうまなし部会の生産者の中の希望者19人を対象に梨「幸水」「豊水」「新興」の3品種の剪定枝をJAが預かり花粉の採取を行います。花粉の採取後は生産者へ返却し、輸入花粉分の一部を補う計画です。
花粉の採取は、生産者から預かった剪定枝を鮮度保持剤が入ったバケツに入れ、水稲育苗用の出芽室で20度から25度に保ちながら2~3週間保管し開花を促進する。開花後、剪定枝から花蕾を採り、葯採取機にかけ選別します。選別後は開葯室に入れて25度で20時間ほど保管することで開葯を促し、花粉を採取します。通常の開葯時期よりも早く花粉の生産ができるため、作業の分散と花粉の安定供給に期待ができる反面、管内に十分な量の花粉を供給するには、技術的にもまだまだ改善が必要です。
そうま地区営農経済部高玉輝生部長は「新たな取り組みであるため、品種ごとの管理方法や開花の均一化、花粉採取量の増大など、課題は多い。技術を確立し安定生産を目指したい」と話します。