東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で営農が困難になった飯舘村で営農再開を目指し、2017年度に試験栽培を実施し、今年度からの本格出荷を目指して栽培を進めてきた新たな品目「小菊」の出荷が始まりました。
JAは露地で栽培できてランニングコストが少ないなどの利点を生かし、村内に戻った農家の所得確保につながり、営農再開の柱となる品目として出荷に向けて検討してきました。また、今年度、花卉出荷協議会の設立で地区をまたいだ栽培技術指導と出荷規格を統一することで「JAふくしま未来ブランドの花」として物流の幅が広がりました。同村ではこれまで、小菊は栽培されていませんでしたが、トルコギキョウなどの花卉栽培が盛んな産地であったため、JAと県は、高冷地でもある同村での小菊栽培を推奨しています。また、花卉は風評被害が比較的少ないのも推奨理由の一つです。
同村で今年度から新たに小菊栽培を始めた齋藤昌良さん・眞喜子さん夫妻は10㌃にお盆咲きの品種、3品種を約12000株栽培しています。7月下旬には、初出荷をむかえました。眞喜子さんは「JAの担当者の指導を忠実にやってきた。出荷までは順調に進んだ」と話していました。
齋藤さん夫妻は震災前、米やトマト、ブロッコリーなど栽培していました。震災後は相馬市へ避難。避難中は営農を休止しましたが、毎日同村まで通い、草刈りなどの保全管理を行っていました。17年4月に飯舘村に帰還。同村深谷地区の深谷農業復興組合に入っている齋藤さん夫妻。昌良さんは組合長を務め、同村の営農再開に向け取り組んでいます。
農家や後継者不足の課題を抱える同村。昌良さんは「後継者などの若い人材に来てもらい、小菊農家が増えてほしい」と村の産地を目指しています。齋藤さん夫妻が栽培した小菊は8月5日頃まで出荷は続き、JAを通じて東北や京浜、関西などを中心に全国各地へと出荷されます。